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「テスターでは捕まえられない不具合」に当たったことはありませんか
どうも、4649メカニッ君 🐶 です。国家1級整備士、整備歴20年。
テスターは一通り使えるようになった。電圧も抵抗も導通も測定できる。それでも、こういう場面でテスターの測定値では判断ができない経験はありませんか。
- アースや電源が 一瞬だけ 断線する瞬断。テスターの数字は正常のまま、症状(メータが一瞬暗くなるなど)だけが発生する。
- インジェクターやセンサーが「作動していない」。でも端子電圧を当てると、それらしい値は出ている。
- CAN 通信の異常。テスターでは「導通あり/電圧あり」までしか分からない。
私も若い頃、ここで何度も困ったことがあります。テスターは「現在の測定値」を読む道具で、「一瞬どう動いたか」「波形がどう崩れているか」までは見えないからです。




それを可能にしてくれるのがオシロスコープです。この記事は、テスターは使えるようになった整備士・整備士の考え方を知りたい人に向けて、「オシロスコープはテスターと何が違うのか」「自分の診断にどこから必要になるのか」を、実例で判断できるように整理します。
結論:テスターは「静的な値」、オシロスコープは「時間軸の波形」。動き・瞬断・通信を追うツールとして必要
先に結論です。
- テスター=静的な値を読む道具。電圧・抵抗・導通・電流を「点」で測定。
- オシロスコープ=時間軸で波形を見る道具。電圧が時間とともにどう動くかを「線」で見る。
次の3つを測定したい場合は、テスターでは測定ができない為、オシロスコープが必要になります。
- 一瞬の現象(電源・アース・信号線の瞬断)
- 波形の形そのもの(インジェクター/点火/センサーの駆動波形、立ち上がりやデューティ)
- 通信(CAN などの波形の乱れ)
逆に、上の3つの測定の必要がなければ、まだ無理に買う必要はありません。テスターで足りる診断のほうが多いからです。
つまりオシロスコープは「テスターの上位互換」ではなく、役割の違う相棒。テスターで基礎を固めた人が、診断の幅を広げるために足す道具です。


オシロスコープで「見えるようになるもの」——テスターの数字に出ない情報
オシロスコープが見せてくれるのは、テスターの1つの数字には現れない情報です。
- 駆動波形の形:インジェクターや点火・センサーの駆動波形が「正常な形」をしているか(立ち上がり・デューティ=時間的な正しさも含む)。
- 一瞬の乱れ:数十ミリ秒の瞬断やノイズ。テスターの平均的な数字では消えてしまう情報。
- 通信波形:CAN-H/CAN-L の波形が規則正しいか、崩れていないか。
ここで大事なのが トリガー という考え方です。オシロスコープは「ある条件になった瞬間」を捕まえて画面に止めておけます。瞬断のように“いつ起きるか分からない一瞬”を捕まえるのが、テスターには無い決定的な違いです。








どこから必要か——「テスターの測定値では判断ができない」が境目
判断軸はシンプルです。テスターで測って、それでも説明がつかない時がオシロスコープの出番です。
- 症状は出るのに、テスターの数字は正常 → 一瞬の現象を疑う=オシロスコープ。
- 端子電圧は出ているのに、部品が動かない → 駆動波形の形を疑う=オシロスコープ。
- 通信系(CAN・LIN)など、導通や電圧だけでは追えない → 通信波形=オシロスコープ。
逆に、断線・短絡・接触不良といった「静的に追える不良」は、テスターのほうが速くて確実です。まずテスター、困ったらオシロスコープ。この順番が現場では効率的です。


現場の実例:テスターでは判断できないが、オシロスコープで原因を捉えた診断
ここからは、私が実際に経験した事例です(私自身のX 投稿より)。
例1:始動不良——「電圧は出ているのに動かない」を波形で見抜く
始動不良で入庫した車両。診断を進めると、全てのインジェクターが非作動状態。オシロスコープでインジェクター波形を測定すると、正常波形の半分の電圧でした。原因は、インジェクター上流側の端子がカプラーから抜けかけていたこと。新車時から端子が奥まで挿入されておらず、10年後に不具合が出た——というものでした。端子を奥まで挿入して改善。
ここがオシロスコープの価値です。テスターで端子電圧を当てれば「それらしい値」は出てしまう。でも波形で見れば「正常の半分」とすぐ分かる。動きの異常は、電圧より波形に出ます。






例2:電源・アースの「瞬断」——シングルトリガーで一瞬を捕まえる
電源やアースの瞬断は、目視で見極めることはほぼ不可能です。たとえばアースの瞬断が起きると、一瞬だけアース側に電圧が発生する。ここで オシロスコープのトリガーモード「シングル」 を使います。シングルでトリガをかけておけば、その瞬間を捕まえて画面に表示してくれる。アースに電圧が発生した時点を見れば、アースの不良と判断できます。
テスターでは測定できない「一瞬」を、止めて見られる。それが「オシロスコープ」の強みです。
例3:CAN 通信のバスオフ——「波形の乱れ」で配線かユニットかを切り分ける
CAN 通信のバスオフは、断線・短絡・ユニット不良などが原因になります。ある車両で、規則的な波形の乱れでバスオフになる事例がありました。CAN-H・CAN-L が同じように規則的に崩れていることから「配線の異常ではない」と判断し、関連するユニットを一つずつ外して切り分け。特定のユニットを外したところで波形の乱れが収まり、通信異常の DTC も入らなくなりました。ボディー系 CAN の不具合で、ハザードやメーター経由で ADAS 等にも症状が波及していた一件です。
ここでも、テスターの「導通・電圧」だけでは「配線かユニットか」を切り分けられません。波形の崩れ方を見たからこそ、原因の方向を絞れました。
最初の一台をどう選ぶか——「テスターの先」に進むなら
「自分の診断にオシロスコープが必要」と判断できたら、最初の一台です。まず選定基準から。
選定基準(整備用途で“必要十分”の目安)
- 周波数帯域:100MHz(70MHz でも可)。整備で扱う信号には必要十分。
- サンプリングレート:1GS/s 以上。一瞬の現象や速い波形を取りこぼさないため。
- チャンネル数:4ch。信号と基準、複数系統を同時に見られる(最低 2ch でも始められる)。
- トリガー/記録:シングルトリガーなど「一瞬を止められる」こと(間欠診断の肝)。
- 取り回し:現場で使う前提なら、薄型・軽量・タッチ操作・車載で使えるか。
カタログのハイスペックより、上の目安を満たして扱いやすいこと。テスター選びと同じ考え方です。






私の実使用機について(正直に)
私が現場で長く使ってきたのは GW Instek(テクシオ・テクノロジー)GDS-210。ただ 現在は販売終了 しています。そこで以下は、「GDS-210 を使ってきた経験から見て、上の目安を満たし、整備で使える」と判断した現行の候補です。GDS-210 以外は実際に使い込んだ上での評価ではなく、仕様と評判で選んだ候補としてご紹介します(ここは正直に分けます)。価格は変動するため、最新の実勢価格と購入先は各リンク先で確認してください。
◎本命:RIGOL DHO814(小型・低価格・高機能。車の整備でも使える)
- 100MHz 帯域/最高 1.25GSa/s/4ch/12bit 分解能と、上の目安をすべて満たす。
- 薄型・軽量で、USB-C 給電のためモバイルバッテリー運用も可能=車載・出先の測定に向く。
- 第三者の詳細レビューも多く、入門〜実用の定番になりつつある一台。迷ったらこれが本命。
- 私はこの商品を個人使用として購入検討中です。
○4chハンディ:OWON TAO3104(タブレット型・4ch・100MHz)
- 100MHz/1GS/s/4ch。8インチのタッチスクリーンで、現場で持ち運びやすいハンディ/タブレット型。
- 据え置きより 手に持って車の周りで使う 人にはおすすめ。携帯性を優先したい人に。
△携帯・入門:HANMATEK HO102S(小型ハンディ・予算重視)
- 100MHz/オシロスコープ+マルチメータ+信号発生器の 3in1。ただし 2ch なので上の「4ch 目安」は満たしません。
- まず一瞬や波形を体験してみたい・とにかく携帯したい 人の入門・サブ用。
迷ったら ◎RIGOL DHO814。4ch を持ち歩きたいなら ○OWON TAO3104、まず体験・携帯重視なら △HANMATEK HO102S。テスターのときと同じで、ハイスペックより「目安を満たして手になじむか」 で選びます。
まとめ:テスターは「静的な値」を測定、オシロスコープで「電気の流れを時間軸」で捉える。両方を使いこなせば診断の幅が広がる
- テスターは静的な値、オシロスコープは時間軸の波形。役割が違う相棒です。
- オシロスコープが要るのは、瞬断・波形の形・通信を追う段階。まずテスター、テスターの測定値で判断できなければオシロスコープ。
- 最初の一台は、テスター選びと同じく 「必要十分なスペック × 現場での使いやすさ」。
そして、テスターのときと同じ大事なこと——良い道具も、”診断の考え方”がなければ宝の持ち腐れです。波形のどこを見て、何を疑うか。その基本は電気回路の理解にあります。






- テスターで迷っているなら先にこちら:サーキットテスターの選び方/使い方は図解で解説(実践編)・測定時のポイント。本記事は「テスターの次」、この3記事は「テスターそのもの」。あわせて読むと、静的な測定から波形診断までが一本につながります。
- 電気回路の基礎を学ぶなら:車の電気回路の基礎(図解)/配線図や記号の見方。
- 通信・制御の診断へ進むなら:リレーが故障するとどうなる?/回路図からECU制御を読み取る方法
道具と知識の身に着けることで、診断はもっと速く・正確になります。続きの記事でも一緒に腕を上げていきましょう。
ではまた 🐶









